監修:岩手医科大学医学部 内科学講座 消化器内科消化管分野教授 松本 主之 先生
潰瘍性大腸炎に関するQ&A
精神的なストレスは関係あるの?
精神的ストレスが潰瘍性大腸炎の活動性を高める可能性があることは以前から論じられてきました。もし不安や抑うつ感がある方であれば、それらを緩和することで寛解の維持や炎症を抑える効果があることも分かってきました。
潰瘍性大腸炎の患者さんは自分のストレスに気づきにくい傾向にある、ともいわれています。
気になることや心配事があれば、小さなことでも身近な家族・医療関係者やメンタルケアの専門機関に相談してみましょう。
注意しなければならない合併症は?
潰瘍性大腸炎の合併症には、腸管(大腸)で起こるもの(腸管合併症)と腸管(大腸)以外で起こるもの(腸管外合併症)があります。
主な合併症を以下に示します。
潰瘍性大腸炎の主な合併症
- ※異型上皮:組織の異常な発育。潰瘍性大腸炎では発がんの原因ともいわれている。
がんになりやすいの?
海外の研究では、発症から長期間経過した潰瘍性大腸炎患者さんにおいて、大腸がんの発生率が高いことが報告されています。このため、日本でも、定期的に内視鏡検査を受けることが推奨されています※。
大腸がんは早期発見が大切ですので、症状がなくても定期的に検査を受けるようにしましょう。
※炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020において、全大腸炎型・左側大腸炎型の潰瘍性大腸炎患者さんでは、発症から8年後以降は大腸内視鏡によるサーベイランスを行うことが推奨されている。(どんなタイプ(型)があるの?をご参照ください)
妊娠はできるの?
潰瘍性大腸炎をもつ女性の妊娠する能力(妊孕性)は、寛解期では一般の方と同じくらいですが、活動期では低下します。
また、寛解を維持していればおおむね安全に妊娠・出産が可能とされていますが、疾患の活動期に妊娠すると、流産・早産・低出生体重のリスクが増加します。
妊娠の期間・薬の種類によっては胎児に影響する可能性があります。治療について、主治医・薬剤師とよく相談するようにしましょう。
子供に遺伝するの?
潰瘍性大腸炎は、家族内での発症が一般よりも多いことが知られていますが、現在では遺伝だけでなく、さまざまな要因が組み合わさって発症する病気と考えられています。少なくとも、必ず子供に遺伝するような病気ではありません。
私を支えてくれる人はどんな人?
多くの医療スタッフ、ご家族、そして患者さん自身です。
- 潰瘍性大腸炎を取り巻くチーム医療
- 潰瘍性大腸炎は再燃と寛解を繰り返し、長期にわたる治療を必要とします。腸管症状だけでなく、腸管外の合併症も併発するため、内科以外の診療科での治療が必要となるケースもあります。
その他、メディカルソーシャルワーカーや管理栄養士など、多種多様なスタッフが治療に携わります。 - 家族支援の重要性
- ご家族のライフスタイルが、患者さんの健康にも影響を与えます。
ご家族は潰瘍性大腸炎患者さんの支援者として重要な役割を果たすなど、医師や医療スタッフのパートナーとしても重要な存在です。 - 患者さん自身もチーム医療の一員
- 潰瘍性大腸炎の治療の進め方においては、自身のライフスタイルと治療を照らし合わせて考える必要性が大きいことから、医療者側からの一方的なものではなく、患者さん自身による自立的な考え方が重視されます。
患者さん自身がチーム医療の重要なメンバーであることを明確に意識することが大切です。
食事に制限はあるの?
症状が落ち着いた寛解期の患者さんの場合、バランスの良い食生活を心がければ、厳密な食事制限の必要はありません。
活動期の患者さんの場合、重症度に応じて以下のような食事制限が必要です。
最近では、インターネットや本でもさまざまな食事療法に関する情報が入手できるようになりましたが、疾患や病期に合った食事の摂り方が大切ですので、主治医・栄養士とよく相談するようにしましょう。
煙草やお酒はやめた方がいいの?
喫煙は、そのものが潰瘍性大腸炎に悪影響を与えるとはいわれていません。しかし、呼吸器・循環器などへの影響を考慮すると、避けた方がよいでしょう。
お酒は、寛解期であれば少量を摂取してもよいのですが、活動期には控える必要があります。
主治医とよく相談し、指示を守るようにしましょう。
どんなことが再燃の原因になるの?
海外で行われた研究では、「ストレス」が再燃の大きな原因として挙げられています。ストレスの他に「自然経過」(自然に再燃してしまう)や「食事の変化」、「寛解維持治療を受けていない」なども再燃の原因とされています。
気になることや心配事があれば、小さなことであっても、身近な家族、医療関係者やメンタルケアの専門機関に相談してみましょう。
また、日々の食事、風邪予防にも気を配るようにしましょう。
悪化時のきっかけ(海外データ)
Schreiber S, et al.: BMC Gastroenterol 2012;12:108.(改変)
運動や旅行は大丈夫?
寛解期であれば、運動や旅行は可能なケースも多いです。活動期では、軽症の場合でも長期の旅行や激しい運動は避けた方がよいといわれています。主治医とよく相談するようにしましょう。
進学や就職で注意することはあるの?
学校や職場は定期的な通院や、再燃がありうることを考慮して選ぶことが大切です(例:勉強量、仕事量、休む時間の有無や融通のききやすさ、外食の機会の有無、残業の有無など)。
主治医とよく相談するようにしましょう。
また、潰瘍性大腸炎は周りの理解も重要ですので、ご家族やご友人、職場の方に病気のことを伝え、理解を得るなどの考慮をしましょう。