監修:滋賀医科大学 消化器内科教授 安藤 朗 先生
クローン病に関するQ&A
精神的なストレスは関係あるの?
生活上のライフイベント(進学や就職、結婚など)や日常生活のストレス(学校、職場、家庭の問題、勉強や仕事の負担など)、不安や抑うつなどの心理的な問題がクローン病の活動性を高める可能性があります。
また、クローン病の患者さんの中には、ストレスに気づいていない方や、ストレスについて無意識に考えないようにしている方もいます。
気になることや心配事があれば、小さなことでも身近な家族・医療関係者やメンタルケアの専門機関に相談してみましょう。
腸管合併症ってなに?
クローン病の合併症には、腸管で起こるもの(腸管合併症)と腸管以外で起こるもの(腸管外合併症)があります。
腸管合併症は、腸管炎症の憎悪によるものです。主な腸管合併症を以下に示します。
主な腸管合併症
内瘻、外瘻ってなに?
瘻孔(腸管に穴が空いて、近くの臓器とつながってしまった状態)のうち、「腸管と腸管(腸管同士)」や「腸管と膀胱」のように、身体の中の臓器同士がつながったものを内瘻、「腸管と皮膚」のように、身体の外とつながったものを外瘻と呼びます。
内瘻と外瘻
腸管外合併症ってなに?
クローン病患者さんでは、腸管だけでなく他の臓器でも症状(腸管外合併症)が現れることがあります。主な腸管外合併症を以下に示します。
主な腸管外合併症
がんになりやすいの?
海外の研究では、クローン病の患者さんは一般の方と比べ、大腸がん・小腸がんの発生率が高いことが報告されています。このため、日本では、定期的な専門医の診察、生検、腫瘍マーカーチェック、MRI検査などが推奨されています。
がんは早期発見が大切であり、症状がなくても検査を受けることが重要です。
妊娠はできるの?
クローン病をもつ女性の妊娠する能力(妊孕性)は、寛解期では一般の方と同じくらいですが、活動期では低下します。
また、寛解を維持していればおおむね安全に妊娠・出産が可能とされていますが、疾患の活動期に妊娠すると、流産・早産・低出生体重のリスクが増加します。
妊娠の期間・薬の種類によっては胎児に影響する可能性があります。治療については、主治医・薬剤師とよく相談するようにしましょう。
子供に遺伝するの?
クローン病は、家族内での発症が一般よりも多いことが知られていますが、現在では遺伝だけでなく、さまざまな要因が組み合わさって発症する病気と考えられています。少なくとも、必ず子供に遺伝するような病気ではありません。
私を支えてくれる人はどんな人?
多くの医療スタッフ、ご家族、そして患者さん自身です。
- クローン病を取り巻くチーム医療
- クローン病は再燃と寛解を繰り返し、長期にわたる治療を必要とします。腸管症状だけでなく、腸管外の合併症も併発するため、内科以外の診療科での治療が必要となるケースもあります。
その他、メディカルソーシャルワーカーや管理栄養士など、多種多様なスタッフが治療に携わります。 - 家族支援の重要性
- ご家族のライフスタイルが、患者さんの健康にも影響を与えます。
ご家族はクローン病患者さんの支援者として重要な役割を果たすなど、医師や医療スタッフのパートナーとしても重要な存在です。 - 患者さん自身もチーム医療の一員
- クローン病の治療の進め方においては、自身のライフスタイルと治療を照らし合わせて考える必要性が大きいことから、医療者側からの一方的なものではなく、患者さん自身による自立的な考え方が重視されます。
患者さん自身がチーム医療の重要なメンバーであることを明確に意識することが大切です。
食事に制限はあるの?
クローン病は、症状が落ち着いた寛解期であっても、脂肪の多い食事を続けると再燃を起こしやすくなります。そのため寛解期の患者さんでは脂肪を抑えた食事が望ましいとされています。ただし、狭窄がある患者さんは腸閉塞の予防のため、食物繊維にも注意が必要です。
また、活動期の患者さんの場合、重症度に応じて以下のような食事制限が必要です。
最近ではインターネットや本でも様々な食事療法に関する情報が入手できるようになりましたが、疾患や病期に合った食事の摂り方が大切ですので、主治医・栄養士とよく相談するようにしましょう。
安心な食材は患者さんにより異なります。
下の表を参考に、少しずついろいろな食品を試してみるとよいでしょう。
田中加奈子,酒井英樹,石川由香:クローン病・潰瘍性大腸炎の安心ごはん,14-15,女子栄養大学出版部,2014.
煙草やお酒はやめた方がいいの?
喫煙はクローン病の発症や再燃、手術のリスクが高くなることが知られていますので、クローン病と診断されたら禁煙するようにしましょう。
お酒は、寛解期であれば少量を摂取してもよいのですが、活動期には控える必要があります。
主治医とよく相談し、指示を守るようにしましょう。
どんなことが再燃の原因になるの?
これまでの研究で、「喫煙」や「NSAIDs(鎮痛薬・解熱剤の一種)」、「ライフイベント(進学や就職、結婚など)による環境変化」、「ストレス(学校、職場、家庭の問題、勉強や仕事の負担など)」が再燃の原因になりうることが知られています。
気になることや心配事があれば、小さなことでも身近な家族、医療関係者やメンタルケアの専門機関に相談してみましょう。また、日々の食事や風邪予防にも気を配るようにしましょう。
運動や旅行は大丈夫?
寛解期であれば、運動や旅行は可能なケースも多いです。活動期では、軽症の場合でも長期の旅行や激しい運動は避けた方がよいといわれています。
主治医とよく相談するようにしましょう。
進学や就職で注意することはあるの?
学校や職場は、定期的な通院や、再燃がありうることを考慮して選ぶことが大切です(例:勉強量、仕事量、休む時間の有無や融通のききやすさ、外食の機会の有無、残業の有無など)。
主治医とよく相談するようにしましょう。
また、クローン病は周りの理解も重要ですので、ご家族やご友人、職場の方に病気のことを伝え、理解を得るなどの考慮をしましょう。
学校の先生には何を伝えればいい?
学生のクローン病患者さんの場合、学校生活の中で病気に対する誤解や、必要以上の制限(クラブ活動、行事への不参加など)を受けることがないよう、学校の先生に病気を理解してもらい、協力を得ることが大切です。そのため、先生には病名と症状、注意点(トイレの頻度、学校での服薬の有無など)を伝えておくとよいでしょう。
また、食事に制限があるときは、事前に給食の献立表をもらい、どれをどのくらい食べて大丈夫か、別の食事を持っていった方がよいかなどを、主治医、栄養士と相談するようにしましょう。